手持ちの大判用シャッターの速度計測
2024-12-01
タグ: #camera大判カメラをやっていると古い機材に頼らないといけない機会が少なからずある。 そういった機材の中でも、殊更露出に直接影響があるシャッターの類は現時点での性能をどうにか調べておかないと実戦投入には不安がある。 そこで、レーザーと光センサを使って、レーザー光がセンサに当たっている時間を測る器具を作った(ブレッドボード上に回路を組んだだけなのであまりちゃんとした器具の形をしていないが……)。 光源とセンサには秋月電子で売っている赤色レーザーとフォト IC ダイオードをそれぞれ使って、センサに当たっている光量の取得と時間測定には Raspberry Pi Pico で動くプログラムを書いた。 作ってみてから少し調べてみたところ、同じような事例が少なくとも2個 [1] [2] 見つかった。
手持ちの古めのシャッターのうち、他に比べれば頻用しているソロントンシャッター2個とレンズシャッター1個を測ってみた結果は以下の通り。 また、下記の表の値は複数回測定を行って得られた平均的な値である。
- 無銘ソロントンシャッター(その1)
表示 | 理論値(ms) | 計測値(ms) | 計測値(分数) |
---|---|---|---|
1/90 | 11.11 | 32.18 | 1/31.1 |
1/75 | 13.33 | 34.73 | 1/28.8 |
1/60 | 16.67 | 36.55 | 1/27.4 |
1/45 | 22.22 | 40.07 | 1/25.0 |
1/30 | 33.33 | 44.81 | 1/22.3 |
1/15 | 66.67 | 47.56 | 1/21.0 |
- 無銘ソロントンシャッター(その2)
表示 | 理論値(ms) | 計測値(ms) | 計測値(分数) |
---|---|---|---|
1/90 | 11.11 | 45.78 | 1/21.8 |
1/75 | 13.33 | 49.48 | 1/20.2 |
1/60 | 16.67 | 52.74 | 1/19.0 |
1/45 | 22.22 | 59.24 | 1/16.9 |
1/30 | 33.33 | 65.58 | 1/15.2 |
1/15 は不調で最後まで幕が走らないので測定せず。
- レンズシャッター(Wollensak Betax No.4)
表示 | 理論値(ms) | 計測値(ms) | 計測値(分数) |
---|---|---|---|
1/50 | 20.0 | 52.17 | 1/19.2 |
1/25 | 40.0 | 73.85 | 1/13.5 |
1/10 | 100.0 | 1162.3 | 1/ 8.6 |
1/ 5 | 200.0 | 1947.6 | 1/ 5.1 |
1/ 2 | 500.0 | 4646.5 | 1/ 2.2 |
ソロントンシャッターのヘタり具合は想像以上で最高速と最低速の間に1段の差もない。 特に(その1)の方は、1/90 にすると「バシュッ」とそれなりに良い音がするので、結構幕速が出ていると予想していたのだが完全に裏切られてしまった。 また、(その1)の 1/15 が表示より短い時間で切れているがこの理由は良くわからない。
一応ソロントンシャッターを分解してみて幕の張力の調整ができる構造なのはわかっていたが、度々お世話になっているカメラ修理屋さんの方に伺ったところ、無闇に張力を上げてもシャッターへの負担が増えて良くないといった旨のお話だった。 なので張力を弄らずにどうにかしたいが、(その2)のように 1/15 で切れているなら、ND2 と ND4 があればこれらを重ねて ND8 にもなるので、1/125 〜 1/30 は 1/15 で切れ、1/8 〜 1/2 は 1s で切れる。 1s なら手動バルブ露光でも大凡正しく撮れるだろう。 最高速 1/125 はコパル3番と同じだし、加えて、より減光量の大きい ND フィルタや低感度フィルムの使用、減感現像という手もあるので、これで静物なら大体撮れてしまうんではないかと思う。 シャッタースピードのキリが悪い時に幕のスリット幅を調整するくらいはしても良いかもしれないが、動くならまま苦労はありつつも割合そのまま使えそうで、ヘタっているとは言えど諦めるにはまだ早いだろう。
レンズシャッターの方は Wollensak Betax No.4 で試したが、やはり高速側はあまり元気がなかった。 一方、低速側でそれなりに正しい速度が出ていたのは嬉しいことだし、こちらもある程度の調整は ND フィルタ等を用いれば困ることはなさそうである。
今回の測定で対象になった手持ちのソロントンシャッターはあんまりにも表示通りの性能が出ていないという事実が判明したのは残念だったが、現在の装備ではバレルレンズで撮るなら専らソロントンシャッターなので個体毎の露光時間のデータが無事得られて満足している。 この結果に従えば実戦で露出を大きく外すことはないだろうし、定期的に測定を行えばシャッターの狂いに気づくこともできる。 久々に趣味ながら実用に適度に跨ってちゃんとデータが取れる工作ができて良い気分になった。 シャッターは他にも幾つか持っているので、計測したら追加の記事を書くかもしれない。
まあ、それでも正直ジナーシャッターは欲しくなったなぁ。